化粧品の質感の再現
化粧品や肌の質感を映像化するときにその質感は極めて重要となります。しかし、化粧品や肌は複雑な反射特性(質感)を持っているので、元来の画像処理技術に基づく化粧シミュレーションでは十分な視覚的質感を映像再現できません。このことは、ラメや見る角度や照明条件で変化する光沢や陰影、そして色の変化を十分にシミュレートできないことになります。
CoSHIはこの複雑な化粧品の反射を再現することを、3DCG化粧シミュレーションを行うことで可能にしました。
独自の肌の光反射計測系で肌の質感を分析
肌表面において光の入射角などの光反射の幾何条件変化に対応する分光反射率を調べるために複数の入社角度に対する顔表面の分光反射率を画像計測できるシステムを開発しました。
化粧品の材料(光輝材など)の反射なども忠実に再現する
光輝材はラメやパールパウダーなどとして知られています。光輝材はパールや様々な金属などを細かく粒子状にしたものが使用されます。このときのパール材の色は主に何らかの方法で着色したものや構造色により表現されます。
この中で特にパールは多層薄膜により虹のような構造色の表現をします。薄膜上では入射光と反射光の波長の位相差によって光の波長ごとに強め合ったり,弱めあったりすることで独特の色彩が生じます。こうしたミクロの光反射も再現して、化粧品の質感を再現します。
工芸作品のCG化
歴史的に価値の高い工芸作品は、形状情報や質感が極めて重要となります。そうした作品をデジタルアーカイブする手法に3DCG再現が行われてきています。しかしながら、金工作品などの金属物体は石膏像などのような不均質誘電体とは異なって、内部反射を持たず鏡面反射成分しか持たないのでレーザー計測が難しいです。また古い工芸作品では、作品の素材の記録や情報が残されていないので、どのような材料がどこに使用されているのかなどの詳細が知られていません。
CoSHIは、そうした工芸作品の表面材質を画像から仮定し、また画像情報から作品の分光反射率を推定する手法についても研究しております。これより、作品の材質の色彩と質感を3DCGでデジタルアーカイブを可能にします。
十二の鷹の再現
左は東京国立近代美術館の工芸館に所蔵されている、「十二の鷹」のCG再現結果。「十二の鷹」は明治期の金工家である鈴木長吉(1848-1919)によって製作され、1893年開催のシカゴ万国博覧会で発表されたものです。
この「十二の鷹」も金工作品であり、しかもその材料に関する情報が不足している問題からデジタルアーカイブが難しい対象の一つでした。
画像提供 田中研究室
劣化材質の計測とCG再現手法
文化財の劣化は経年による紫外線や酸性雨により色あせ等の視覚的な特徴として変化が表れ、とくに長い年月による紫外線による劣化は様々なところで見られます。
そうした劣化を、光反射と照明情報を頼りに、紫外線劣化した物体の劣化による視覚特性の変化していく状態をシミュレートします。
画像提供 田中研究室